発達障害の子どもに、習い事をさせたほうがいいんだろうか——。
そう考えたとき、同時に浮かんでくるのは不安のほうかもしれません。じっとしていられなくて迷惑をかけたらどうしよう。断られたら、白い目で見られたら、どうしよう。
うちの三男(ASD・支援級)も、そうでした。
今日は、わが家が選んだ「地域の音楽クラブ」の話をします。月謝のかかる習い事ではなく、校区の生涯学習活動です。費用は無料。それなのに、お金では買えないものがたくさん手に入りました。
同じように「習い事、どうしよう」と迷っている保護者の方の、少しでも参考になればうれしいです。
きっかけは、学校からの1枚のプリント

長男と次男は、土日に地域の子ども会のソフトボールチームに入っていました。それも地域活動のひとつですが、三男には少しハードルが高い。
そんなとき、学校から1枚のプリントをもらってきました。
校区の生涯学習活動の案内でした。地域の大人たちが先生になって、月に1〜2回、土曜の午前中や日曜日に子どもたちに歌や楽器を教えてくれる音楽クラブ。指導してくれるのは小学校の先生や元ピアニストの方。秋には敬老会のステージで発表もあるそうです。
しかも、費用は無料です。
一番の目的は、「地域に知ってもらうこと」だった
正直に言うと、音楽を習わせたかったわけではありません。
一番の目的は、地域の人と繋がることでした。
もし私の知らないところで、息子がこの町の中で困ったことになっていたら——。そのとき、息子のことを知っている人が近くにいてくれたら、助けてくれるかもしれない。声をかけてくれるかもしれない。
親がずっとそばにいられるわけではありません。だからこそ、息子のことを知っている大人を、地域に少しでも増やしておきたかったのです。
「ここはどんなお子さんもウェルカム」

申し込む前に、幹事役をしてくださっている婦人会の方に、思い切って伝えました。息子は自閉症で、支援級に通っていますと。
返ってきたのは、こんな言葉でした。
婦人会の方ここはどんなお子さんもウェルカムですよ
ほっとしました。
一番心配だったのは、じっとしていられなくて迷惑をかけることです。だから「私も一緒にいていいですか?」と聞いてみると、これも「全然オッケーですよ」と。基本は親は送り迎えだけなのですが、快く受け入れてもらえました。
嫌がったら、1回だけ参加してやめてもいい。そのくらいの気持ちで、送り出すことにしました。
心配は、いい意味で裏切られた
参加者は、6年生2人、4年生6人、そして1年生は息子ひとり。
初回の息子は、正直、訳がわかっていなかったと思います。私に連れられてきた、という感じでした。
でも、ふたを開けてみれば——息子はおとなしく座って、みんなと一緒に活動していました。迷惑をかけるどころか、6年生の2人が何かと世話を焼いてくれて、末っ子のようにかわいがられていました。
私自身も、サポート役として毎回参加するうちに、幹事の方と世間話をする仲になりました。下校時の見守り隊の方とも顔見知りになり、道で会えば挨拶を交わすようになりました。
息子のことを知っている大人が、少しずつ増えていく。それこそが、私の欲しかったものでした。
「鉄琴は無理」と思ったのは、私のほうだった
秋の敬老会に向けて、演目の練習が始まりました。歌は「エイメン」。そして楽器の演奏は「小さな世界」です。
楽器を決めるとき、私は内心「鉄琴は無理だろう」と思っていました。音楽経験のない息子です。カスタネットやトライアングルなら、と勧めました。
でも息子は言いました。



鉄琴をやりたい
……本人がそう言うなら、やらせてみよう。鉄琴に決まりました。
(縄跳びでも自転車でもそうでしたが、結局いつも、本人が「やる」と決めたことが一番うまくいくのです。)
一生懸命鉄琴の練習をしていました。間違っていたら、私が助け舟をだしました。学校の鉄琴だけでは不十分なので、家のピアノでも練習しました。自分から進んで練習に取り組みました。
舞台袖で、祈るように見ていた


敬老会の本番。
ステージの上の息子を、私はサポートすることができません。舞台袖で待っていることしかできないのです。立ち位置がわからなくなったら? 途中で固まってしまったら? 頼れるのは、隣にいる6年生の2人だけでした。
失敗せずに最後までできるか。緊張しないでできるか。祈るような気持ちで見ていました。
結果は——期待以上でした。
立ち位置は6年生がそっと教えてくれました。時々テンポがずれてはいましたが、それはそれでかわいらしいところです。歌も、鉄琴の「小さな世界」も、リハーサル通り、最後まで上手にできました。
1年生ということもあって、客席のお年寄りたちの目はとても温かかったです。わが家の場合は、低学年だったこともあり、地域の方がとても温かく見守ってくださいました。しかも帰りには、敬老会のお土産までいただきました。無料で参加させてもらったうえに、お土産まで。地域に感謝するばかりです。
ご近所にも、自分から伝えた
音楽クラブと並行して、もうひとつやったことがあります。
わが家の近所には、小学生の子がいる家庭が何軒かあります。そのお母さんたちに、私は自分から伝えました。
「うちの子、支援級なんです」
少し驚かれた感じはありましたが、付き合い方は何も変わりませんでした。あとから分かったことですが、ご近所には他にも支援級のお子さんが2軒ありました。珍しいことではないのです。
伝えた理由は、音楽クラブと同じです。挨拶ができなくても、ちょっと様子が違っても、「ああ、あの子ね」と多めに見てもらえるように。
そしてこの繋がりは、思わぬ形で返ってきました。ご近所の同じ支援級のお子さんの家庭が、放課後等デイサービスの良い事業所を教えてくれたのです。今も息子がお世話になっている放デイは、この口コミがきっかけでした。


地域と繋がっておくことは、「もしものときの安心」だけではなく、リアルな情報という形でも返ってくるのだと知りました。
「2年も行く」と、自分から言った
1年生のときは、訳もわからず母に連れられて参加した音楽クラブ。
嫌がったら、いつでもやめさせるつもりでした。
でも今年、2年生になった息子は、自分から言いました。



ぼく、2年生も音楽クラブに参加する!
親が「地域との繋がり」のために選んだ場所が、いつの間にか、息子自身の居場所になっていました。今年も親子で通う予定です。
一方で、平日は公文にも通っています。地域活動と学習、それぞれ違った良さがあり、どちらも息子の成長につながっていると感じています。公文について詳しく知りたい方は、こちらの記事で体験談をまとめています。


まとめ


「発達障害の小学生に習い事は必要?」——冒頭の問いに、今の私はこう答えます。
月謝のかかる習い事だけが、選択肢ではありません。
- 地域の生涯学習活動なら、費用は無料。校区の小学生なら誰でも参加できるものが、案外あります(学校からのプリントをチェックしてみてください)
- 特性は先に伝えるのがおすすめです。「どんなお子さんもウェルカム」と言ってもらえたら、親の肩の荷が下ります
- 心配なら「一緒にいていいですか?」と聞けばいい。断られたら、そのときに考えればいいのです
- わが家の場合は、低学年のうちに参加したこともあり、地域の方が温かく見守ってくださいました
そして何より。習い事で身につくスキルよりも大きかったのは、息子のことを知ってくれている大人が、この町に増えたことでした。
音楽が上手になることより、地域で「○○くん」と声をかけてもらえることのほうが、私にとっては何倍もうれしいことでした。
親がずっとそばにいられるわけではないからこそ、地域の中に、小さな安全網を張っておく。「うちの子に習い事なんて」とためらっている保護者の方、まずは校区の掲示板や学校のプリントを、のぞいてみてください。親子で一歩ずつ、進んでいきましょう。









