うちの子、野菜を全然食べてくれない——。
ASD(自閉スペクトラム症)の子の偏食に悩んでいる方は、多いのではないでしょうか。うちの三男も、野菜が苦手でした。
そんな息子が今、週に1回、日曜の晩ご飯を自分で作っています。基本はチキンカレーです。そして料理をするようになってから、偏食が少しずつ変わってきました。
きっかけは、療育でお世話になっているトモニの先生のアドバイスでした。この記事では、ASDの息子と続けている週1回のカレー作りと、それで偏食がどう変わったかをお話しします。同じように悩んでいる保護者の方の、少しでも参考になればうれしいです。
トモニの先生のすすめで始めた
2025年6月、トモニでの面談で、先生からこう言われました。
トモニの先生週に1回でいいので、お子さんに料理を作ってもらってみてください
トモニでは、朝マラソンや山歩きと並んで、料理も療育の柱として取り入れられています。トモニの教材には「料理は優れた療育内容の詰まった宝庫」と書かれています。手順が分かる、手先を使う、計量カップで数字を扱う。そして、自分が作ったものを家族が喜んで食べることで、褒められ、感謝され、自己肯定感が育つ——料理には、それだけの学びが詰まっているのだそうです。
「遊びが下手な子どもも、料理ならできる」という言葉も、教材にはありました。
そこで始めたのが、日曜日の晩ご飯を三男が作る、という習慣です。
最初は料理なんて無理だと思った
もともと手先は器用ではありません。この子に包丁を使わせることなんてできるのだろうか。最初は半信半疑でした。
しかし、トモニの教材で、実際に自閉症の子どもに料理を教えているお母さんたちのアンケートを見ると、小学5年生の男子がカレー、卵焼き、味噌汁、餃子などを作っていると書かれていました。中学1年生の女子は、朝食作りから洗濯物を干すことまでやってくれているそうです。
また、街録chというYouTubeチャンネルの動画で、重度知的障害を伴う自閉症の娘さん・ゆいなさんを育てている「とまごうゆきえさん」が登場していました。
とまごうゆきえさんは、小さい頃から台所にゆいなさんを呼んで、一緒に料理をしていたそうです。コツコツと練習を重ねて、時間をかけて一つずつ教え込んで、中学生になった今では、一人で豚汁を作れるまでになったと話していました。
うちの子もゆっくり教えたら、中学生になる頃には、自分一人で料理ができるようになるかもしれない。
そう思って、早速日曜日にチキンカレーを作ることにしました。
にんじんを切る練習から


いきなりたくさんのことをさせて、嫌になってしまってはいけないと思いました。まずは、玉ねぎの皮むきや、にんじんを切るところからです。
玉ねぎの皮むきはなんとかできますが、にんじんを切るときはヒヤヒヤします。左手を猫の手みたいに指を丸めるように何度言っても、なかなかできません。一回切るたびに「猫の手!」と注意していました。
初めのうちは、私が息子の後ろに立ち、包み込むように手を添えて、一緒に包丁を動かしました。力の入れ方や刃の向きを、その都度ゆっくり伝えながら切っていきました。
最初は100円ショップなどで売っている子ども用の小さい包丁を使わせていましたが、切りにくいため、かえって力が入りすぎてしまいます。思い切って、こちらの一万円ほどの包丁をAmazonで購入しました。以前、料理好きの次男のために買ったものと同じものです。
ちなみに私自身は3000円くらいの包丁を使っています。子どもの道具のほうが、いいものだったりします。
包丁は危ないから持たせない、ではなく、危ないからこそ正しい使い方を教えておく。これは大切なことだと思います。
玉ねぎは、水泳のゴーグルをつけて切る


1〜2ヶ月経つと、少しずつできるようになってきました。
三男が担当するのは、玉ねぎとにんじんを切ること、じゃがいもをピーラーでむいて一口大に切ること、鶏もも肉を切ること。鍋に油を入れて鶏肉を炒め、玉ねぎとにんじんを加えて炒めたら、水を1000cc。この計量カップで測るのも、三男の仕事です。お米を洗って炊飯器にセットするのも、三男がやります。最後にルーを入れるところだけ、私がやっています。
玉ねぎを切るときは、毎回「目が痛い」と言います。この前は、水泳用のゴーグルをつけて切っていました。
次男も一緒に参加しています。次男はもともと料理が好きで、魚をさばけるほどです。次男も一緒になって、遊び感覚で料理をするようになっていきました。
水を1000cc測る、じゃがいもを一口大に切る。机の上のドリルではなかなか身につかない「数」や「量」の感覚が、料理の中では実感を伴って身についていく。トモニの教材にも「机上の学習が生きたものとなる」と書かれていて、たしかにそうだなと感じています。


包丁で手を切ったことも、1〜2回あります
正直に書きます。危なくないわけではありません。
包丁で手を切ったことは、1〜2回あります。ピーラーで指を切ったこともあります。鍋の熱いところを触って軽くやけどしたこともあります。
怪我をしないよう注意しても、してしまいます。それでも、これもいい経験だと思っています。親が危険なことを全部取り除くことは、そもそも不可能です。
危ないことをさせないのではなく、危ないことは危ないと知ったうえで、自分でどう対処するかを考える。自分なりに危険を察知して、注意する力を身につける。料理は、それを教えてくれます。
始めてから1年ほど経った今は、それほど危なっかしいことはなくなりました。でも、最初のうちは本当に、目を離せません。付きっきりでないと危ないです。
偏食は、少しずつ変わってきた
三男は野菜が苦手でした。保育園の頃は、正直私にもそこまで余裕がなく、嫌がるものを無理に食べさせることはしていませんでした。
料理を手伝うようになってから、変化がありました。
焼きそば作りも一緒にするようになり、ピーマンが食べられるようになりました。自分が作ったカレーは、よく食べます。自分で切って、自分で炒めた野菜は、「食べてみようかな」と思えるようなのです。
それでも、トマトだけはどうしても駄目です。料理をしても食べられないものは、あります。そこは正直にお伝えしておきます。
でも、「料理をすることで、苦手な食べ物が多少は減ってきた」。この実感は、はっきりとあります。
三男は、じっと座っているのが苦手なところがあり、私はどちらかというとADHD傾向もあるのではと感じることもあります(正式にそう診断されたわけではなく、あくまで私の印象です)。そういう特性がある子にとっても、手順どおりに体を動かす料理は、合っているところがあるのかもしれません。
先週は、ハヤシライスもほぼ一人で


チキンカレーばかりだと飽きてくるので、たまにキーマカレーにしたり、先週はハヤシライスを作りました。
参考にしたのは、YouTubeの料理研究家リュウジさんのレシピです。材料は私が用意しましたが、あとはほとんど三男が一人で作りました。
美味しかったのか、「食べて、食べて」と私にしきりに勧めてきました。
家族が「おいしい」と言って食べると、本人はやっぱりうれしそうです。作ってもらう側から、作って喜ばれる側へ。この経験が、息子の自信になっているのを感じます。
「次は買い物から」という宿題
2026年、トモニの先生に、料理を続けている報告をしたところ、こう言われました。



次は、材料を自分で買うところからさせてください
まだカレーの材料をすべて買うところまでは進んでいませんが、先日、生クリームを1つだけ買う練習をしてみました。私は付き添うだけで、レジのお姉さんに自分で渡し、バーコードを打ってもらい、精算機で自分のお財布からお金を出して支払う——それを、三男一人でやりました。
まとめ
週1回のカレー作りを振り返って、大事だったことが3つあります。
① 危なくないよう、大人が付きっきりで見守る 最初のうちは目が離せません。1年ほどかけて、少しずつ危なっかしさが減っていきました。
② 道具はいいものを使う 切れにくい道具のほうが、かえって怪我をしやすいと感じています。
③ できることを、少しずつ増やしていく 玉ねぎを切る、水を測る、お米を研ぐ。ハヤシライスをほぼ一人で作る。次は買い物から。少しずつ、できることが増えています。
偏食については、劇的に治るわけではありません。トマトは今も食べられません。それでも、自分で作った料理なら食べてみようと思える——その小さな変化が、わが家では確かに起きました。
料理は、手順を覚えること、手先を使うこと、数字を扱うこと、そして自分が作ったものを家族が喜んで食べてくれること。たくさんの学びが詰まっています。そしてその先にあるのは、この子がいつか、一人でも生活していける力だと思っています。
「うちの子にお手伝いなんて」と思っている保護者の方、まずは週に1回、簡単なメニューから始めてみてはいかがでしょうか。親子で一歩ずつ、進んでいきましょう。
手先を使う練習という意味では、蝶々結びの練習も同じような道のりでした。こちらもよかったらどうぞ。









