「自閉症と診断されたあと、いったい何をすればいいんだろう」
診断を受けた直後、私はそんな思いでいっぱいでした。支援級への転籍も決まり、学校との連携も少しずつ整ってきた頃、私が出会ったのがトモニ療育センターの療育メソッドでした。
あれから約1年。息子の変化は、私が想像していた以上のものでした。
高額療育があふれる中で感じた違和感

息子が自閉症だとわかってから、私はSNSで自閉症のことを検索しては泣く毎日を送っていました。
インスタグラムを開けば、「これをしたら言葉が増えた」「〇〇メソッドで劇的改善」といった広告が次々と流れてきます。クリックしてみると、ほとんどが高額な療育プログラムや教材の販売につながっていました。
小学生向けの療育メソッドを数十万円で勧めるものも珍しくありませんでした。
「本当に息子に合うものはどれなんだろう」-そんな迷いの中で出会ったのが、Fucoママさんと桜梅子さんの発信でした。
お二人に共通していたのは、お子さんがすでに成人して幸せに暮らしているという実績です。
流行りの療育は「今すぐ効果が出る」ことをうたうものが多い中、トモニの療育メソッドは何年もかけて子どもの土台をつくっていく考え方でした。
成人した自閉症の方が自立して幸せに生きているという姿は、最近はやりの療育とは一線を画していると感じました。
トモニ療育センターとは

トモニ療育センターは、河島淳子先生と高橋知惠子先生が1994年に開設された、自閉症・発達障害の子どもと家族を支援する療育センターです。
「よりよき家庭療育をこころがけて」という理念のもと、お母さんが知識ある愛をもって家庭で療育できるよう支援することを大切にされています。
残念ながら、長年センターを牽引してこられた河島先生は2025年2月に旅立たれました。現在は高橋知惠子先生がその意志を受け継いで運営されています。
センターは大々的な宣伝はされていません。本当に困っているご家族に、静かに寄り添ってこられた場所です。
河島先生が積み上げてこられた療育メソッドは、先生の教えを受けた方々によって今も丁寧に受け継がれています。私もそのご縁に導かれ、このメソッドを知ることができました。
実践①:100並べ(4月19日〜)

最初に取り組んだのが100並べです。
1から100までの数字カードを順番に並べていく課題学習で、トモニ療育センターが長年すすめてきた取り組みのひとつです。
最初の頃、息子は机の前にじっと座っていることができませんでした。
「座って」と声をかけても、すぐに立ち上がる。カードに手を伸ばすどころか、そこにいることすら難しい状態でした。
それでも毎日続けていくうちに、少しずつ変化が現れてきました。私の指示に従って椅子に座れる時間が増え、カードを手に取り、並べることができるようになっていったのです。
トモニの資料には「課題学習に取り組んでいると、子どものことがわかってくる」と書かれています。まさにその通りで、100並べを通して私も息子のことをたくさん理解できるようになりました。
実践②:朝マラソン(4月27日〜)

次に始めたのが朝のジョギングです。
登校前の20分間、息子と一緒に近所をゆっくり走ります。
最初の1週間は、朝起こすことだけで一苦労でした。そこでひとつ工夫をしました。息子をパジャマで寝かせるのをやめたのです。
夏はTシャツとスポーツ用ズボン、春秋はスウェットの上下、冬は上にダウンを羽織るだけ -起きてすぐそのまま外に出られる格好で寝るようにしました。眠たい状態の息子に着替えさせることは難しいと判断してのことでしたが、これが効果てきめんでした。
最初はなかなか走れず、ほとんど歩いている状態でした。それでも続けていくうちに、自分でパッと起きられるようになり、気づけば走るスピードも自然と上がっていきました。
この取り組みを通じて気づいたことがあります。母親である私自身がリーダーとなって一緒にやらなければ、息子はついてこないということです。「走りなさい」と言葉で促すのではなく、私が前に立って走る。その姿を見て、息子は動きます。山歩きも同じでした。
トモニの資料には、マラソンの目的としてこう書かれています。
「身体を丈夫にし、耐久力をつける。生活リズムを整える。情緒の安定をもたらす。脳の発達を促す。」
今もこの朝20分のジョギングは続けています。
実践③:山歩き(5月11日〜)

5月に入って、初めて箕面での山歩きに挑戦しました。
最初は箕面駅から昆虫館まで約1km、それがやっとでした。「疲れた」「もう歩けない」と弱音を吐く息子を励ましながら、少しずつ歩く距離を伸ばしていきました。
山歩きでも、朝マラソンと同じことを実感しました。私が先頭に立って歩かなければ、息子はついてきません。「行くよ」と言いながら私は前に進む。息子はその背中を追って歩いてくるのです。
それから約1年。今では箕面の滝まで往復約5kmを歩けるようになりました。
トモニの資料には山歩きについてこう書かれています。
山道は注意力と巧みさを必要とするので歩行が確実になる。母子関係を強いものにする。母子ともに心がなごみ、情緒が安定する。
二人で黙々と歩きながら、自然の中で同じ時間を過ごす。その積み重ねが、息子との関係をより深いものにしてくれた気がしています。
実践④:折り紙(4月28日〜)

河島先生が「手を磨く」と表現されていた取り組みです。
毎日1枚、折り紙でやっこさんを折ることから始めました。最初はうまく折れず、手先を使うことがとても苦手な様子でした。
でも毎日続けることで、やっこさんがきれいに折れるようになり、次は鶴に挑戦。今では小さな折り紙で千羽鶴を折れるほどになりました。
指先を丁寧に使う作業が、集中力や手先の器用さを少しずつ育ててくれています。
参考にさせていただいている先輩ママの発信

この療育メソッドを知るきっかけになったのが、同じ道を歩んでこられた先輩ママたちの発信です。
Fucoママさんは、河島先生のもとでトモニの療育を学ばれたお母さんです。ご自身の体験をブログやYouTubeで丁寧に発信されています。息子さんは現在、14年以上勤続する正社員として自立されており、その歩みがとても励みになっています。
→ FucoママさんんYouTubeチャンネル
桜梅子さんは、重度発達障害のお嬢さんの療育に9年間取り組まれてきた経験をnoteで公開されています。河島先生の講演動画なども紹介されており、私もくり返し読ませていただいています。
→ 桜梅子さんのnote
堀内宏美先生は、河島先生のもとで療育を学ばれた女性医師です。ご自身も重度自閉症の息子さんを育てながら、徳島でNPO法人トモニ発達支援所を設立・運営されています。医師としての専門知識と、親としての実体験の両方から発信されており、とても説得力があります。
→ NPO法人トモニ発達支援所
お三方とも、困っている親御さんに寄り添いたいという思いから発信・活動されています。私はその姿にどれほど励まされてきたかわかりません。
まとめ
100並べ、朝マラソン、山歩き、折り紙。
どれも派手な療育ではありません。毎日コツコツと続ける、ただそれだけです。
私はまだ道の途中です。実績を語れるほどではありませんが、息子が確かに変わってきていることは感じています。
机に座れなかった息子が、毎朝自分で起きて走るようになり、5kmの山道を歩けるようになり、小さな鶴を折れるようになりました。
「今日を大切に」-河島先生がよく言われていた言葉です。
操作できるのは今日だけ。今だけ。その言葉を胸に、今日も息子と並んで歩いています。