蝶々結びを子どもに教えるのは、意外と難しいものです。
大人にとっては無意識にできる動きなので、「どう教えたらいいのか」を言葉にしようとすると、案外できません。ましてや手先が不器用な子なら、なおさらです。
自閉症(ASD)のあるうちの三男も、手先を使うことがずっと苦手でした。
でも、段ボールで作った練習キットと、ちょっとした工夫で、蝶々結びは1週間ほどでできるようになりました。
今日は、そのときの教え方をお話しします。発達障害のあるお子さんだけでなく、「蝶々結びをどう教えたらいいか分からない」という保護者の方にも、少しでも参考になればうれしいです。
箸もボタンも、全部「練習あるのみ」だった

長男と次男には、箸の持ち方もボタンのかけ方も、教えた記憶がほとんどありません。いつの間にかできるようになっていました。
三男は違いました。
箸も、ボタンも、はさみも、鉛筆も。全部、何度も何度も繰り返し練習して身につけてきました。近道はなくて、繰り返すのみ。それがわが家の日常です。
ありがたいのは、今はYouTubeがあることです。
言葉で説明されるより、目で見て真似する方が、息子にはずっと分かりやすい。「見てから、やってみる」ができるのは、本当に助かっています。
蝶々結びも、その延長でした。小学1年生のとき、「そろそろできるようにしておきたい」と思って、練習を始めました。
段ボールで練習キットを作った
いきなり本物の靴で練習するのは、ハードルが高いと思いました。
足元にある靴に屈み込んで練習するのは、姿勢的にも大変です。机の上で、目の前に置いて練習できるものがほしい。
そこで見つけたのが、「たかちゃん先生の特別支援学習プリント」さんの無料教材です。
たかちゃん先生の特別支援学習プリントはこちら→ https://happy-funsite.com/archives/881
スニーカーのイラストを無料でダウンロードできます。特別支援学級の先生をされていた方のサイトなので、教材としての工夫が行き届いています。
- 教材プリント
- 段ボール
- カラーひも(2色)
- のり又はテープ

作り方は簡単です。
紐はダイソーで買いました。費用は紐代だけ。あとは家にあるものでできます。

紐の色は、左右で変える
キットを作るとき、ひとつ大事なポイントがあります。
左右の紐の色を変えることです。
うちは赤と青の2色にしました(ダイソーにこの2色しかなかったのです)。
発達障害の子は、視覚にひっぱられる傾向があります。だからこそ、色の力を借りる。「赤い紐で輪っかを作る」「青い紐をまわす」と、どっちの紐をどう動かすかが目で見て分かるようにするのです。
欲を言えば、参考にする動画と同じ色の紐にできると、もっと良いです。見本と手元が同じ色なら、動画のとおりに真似するだけで済みます。
動画を一時停止しながら、1手順ずつ真似た
参考にしたのは、縦結びにならない蝶々結びのコツを解説しているこちらの動画です。
練習のやり方は、こうです。
動画を再生して、一時停止しながら、1手順ずつ真似る。
輪っかを作ったらストップ。同じように輪っかを作る。紐を通したらストップ。同じように通す。この繰り返しです。
言葉で「ああして、こうして」と説明するより、お手本を見て、止めて、真似る。目で見て理解するのが得意な息子には、この方法が一番合っていました。
教えるときは、息子の横に並んで座りました。向かい合わせだと、左右が逆に見えてしまうからです。
一番つまずいたのは、輪っかを作るところでした。そこは私が「親指と人差し指で、これで輪っかをつくるんだよ」と、実際にやって見せました。
イライラしたら、ゆっくりできるときに
縄跳びのときのような大泣きは、ありませんでした。
でも、うまくできないと、息子はイライラしていました。
だから蝶々結びの練習は、毎日決まった時間にはやりませんでした。ゆっくり時間が取れるときに、落ち着いてやる。焦らせない。イライラしたまま続けない。
それでも、練習を始めて1週間ほどでできるようになりました。親子で喜びました。
縄跳びは6週間、自転車は1ヶ月かかったのに、蝶々結びは1週間。これは息子が成長したからというより、課題の難易度の違いだと思っています。縄跳びや自転車は、手と足を同時に違う動きで動かさないといけません。蝶々結びは、手だけです。
課題によって、かかる時間は違って当たり前。だから、時間がかかっても焦らなくていいのだと思います。


療育の先生の言葉で、「間違っていなかった」と思えた
それから1年ほどたった、小学2年生の6月のことです。
療育でお世話になっている先生から、こんなアドバイスをもらいました。
療育の先生箱に紐をまわして、蝶々結びの練習をするといいですよ
私は「もうできています」とは言わずに、うなずきながら聞いていました。
でも心の中では、静かに確信していました。
私が自己流でやってきたことは、間違っていなかったんだ——。
専門家が勧める方法に、自分のやり方が重なった瞬間でした。親が子どもをよく見て考えた工夫は、案外、正解に近いところにあるのかもしれません。
できて終わりじゃない。「やらないと忘れる」


蝶々結びは、できるようになって終わり、ではありませんでした。
やらないと、忘れてしまうのです。
だから、日常の中で使い続ける仕組みを作りました。
わが家では、靴を2足用意しています。1足目は学校用のマジックテープの靴。2足目は、あえて紐タイプのスニーカーです。
紐靴を履くのは、私と一緒のときだけ。たとえば朝のジョギングのときです。紐がほどけたら、よほど急いでいるとき以外は、自分で結ばせます。ほどけても、私が横について見守れる場面だからこそ、実戦練習になります。
学校へはマジックテープの靴で行きます。ほどけたとき、そばで見守れる人がいないからです。
一方で、無理はしていません。水着の紐は蝶々結びにするタイプでしたが、まだ自信がなかったので、紐を抜いてゴムに入れ替えました。できるところは実戦で、不安なところは回避する。その使い分けでいいと思っています。
ちなみに、縄跳びを束ねてくくるのも、最初はできませんでした。これも練習したら、できるようになりました。
まとめ
蝶々結びの練習を振り返ると、ポイントは4つでした。
① 段ボールで練習キットを作る たかちゃん先生の無料教材をプリントして、段ボールに貼るだけ。机の上で、目の前に置いて練習できます。
② 紐の色は左右で変える 視覚にひっぱられる子だからこそ、色の力を借りる。できれば見本の動画と同じ色に。
③ 動画を一時停止しながら、1手順ずつ真似る 言葉の説明より、見て真似る。教えるときは横に並んで。
④ できたあとも、日常で使い続ける やらないと忘れます。紐靴の2足目を用意して、親が見守れる場面で実戦練習を続けています。
箸も、ボタンも、縄跳びも、自転車も、そして蝶々結びも。息子は何でも、人より時間がかかります。でも、繰り返し練習すれば、必ずできるようになってきました。
その積み重ねの先にあるのは、「将来、ひとりでも困らないように」という願いです。自分のことを自分でできる力は、一つひとつは小さくても、息子の一生の財産になると信じています。
「蝶々結び、どう教えたらいいんだろう」と悩んでいる保護者の方。まずは段ボールと紐で、キットをひとつ作ってみてください。親子で一歩ずつ、進んでいきましょう。









