「うちの子に、習い事なんて無理かもしれない」
自閉スペクトラム症で多動の傾向がある息子。じっと座っていられるだろうか、ほかの子に迷惑をかけないだろうか、宿題はこなせるだろうか——習い事を考えるたび、私はそんな不安でいっぱいでした。
そんな息子が今、公文に通えています。「算数が得意だ」と、自分で言えるほどの自信もつきました。
ここまで来られたのには、いくつかの理由があります。同じように「うちの子には無理かも」と迷っているお母さんに、我が家の体験が少しでも届けばうれしいです。
きっかけは「家庭学習が大変になってきた」こと
もともと我が家では、家庭で算数の学習をしていました。
私たちは、療育機関「トモニ療育センター」の考え方を参考にしていました。
タイルを使って足し算や引き算を教え、家のプリンターで問題を作っては、息子に解かせていたのです。
息子は、毎日続けていた「100並べ」のおかげもあって、もともと算数が嫌いではありませんでした。机に向かう習慣も、公文を始める前からついていました。
ただ——毎回プリントを手作りするのは、私にとって、だんだん大変になってきたのです。
「公文でプリントをもらえば、私の負担も減るかもしれない」
そう思いついたのが、最初のきっかけでした。多動の傾向がある息子でも、家でならまわりに気をつかうことなく、落ち着いて学習できると考えたのです。
先生への相談が、道をひらいてくれた
通おうと思った公文教室は、長男・次男のときからお世話になっている先生のところでした。ベテランで、やさしく、そしてしっかり指導してくださる先生です。
私は正直に事情をお話ししました。
すずらん家でプリントを解かせたいので、教材だけいただけませんか
すると、先生は



一度、教室でやってみたらどうですか?
と言ってくださいました。
ちょうど夏休みの時期でした。その教室では、低学年は早い時間、高学年は遅い時間、というふうに、生徒が一度に集まりすぎないよう工夫されていました。



比較的すいている時間から試してみてはどうですか?
先生のその提案に背中を押されて、私は息子を教室に連れていくことにしたのです。
もし、あのとき相談していなかったら。もし、「教材だけ」とあきらめていたら。息子が教室で学ぶ姿は、見られなかったかもしれません。
まずは相談してみること。それが、こんなにも大きな一歩になるとは思いませんでした。
母が「隣に座る」という通い方
私が選んだのは、息子の隣に座って伴走するという通い方でした。
息子が座る椅子のとなりに、私も座ります。
息子が



この問題、わからないよ
と言えば、



その問題なら、こうしたら解けるよ
と声をかける。そして、解き終わったプリントを、息子が先生のところへ持っていく——そんなスタイルです。
この教室では、本来、保護者は入口近くの待合の椅子で待つことになっています。でも先生は、私が隣に座ることを快く認めてくださいました。
息子がわからなくて困ったときや、集中力が切れてぐずってしまったとき、私がすぐに対応できるように。そばにいることで、息子は安心して学習に取り組めたのだと思います。
夏休みのあいだ、人の少ない時間を見計らって通っているうちに、息子は思っていたよりずっと落ち着いて、嫌がらずに学習に取り組めるようになりました。
その様子を見て、先生は



このまま教室で続けてみてはどうですか?
と言ってくださいました。だから、夏休みが終わってからも、ずっと通い続けています。
公文を始めて変わったこと


息子が公文を始めたのは、小学1年生の夏休みでした。それから通い続けるうちに、息子にはうれしい変化がいくつも見られました。
まず、プリントを用意する私の負担が、ぐっと軽くなりました。これは小さなことのようで、毎日のことなので本当に助かっています。
そして息子は、掛け算や割り算もできるようになりました。「クラスで、ぼくみたいに計算できる子っているのかな〜」と、ちょっと得意げに話す姿が、なんともかわいらしいのです。
学校での様子も、担任の先生から「文章問題はサポートが必要だけれど、計算は十分にできていますよ」と聞いています。得意なことがある、というのは、本人の大きな支えになっているようです。
もうひとつ、思いがけない成長がありました。
公文では、プリントが終わると、先生のところへ採点してもらいに並びます。最初の頃、息子は列に並ぶことができませんでした。でも今では、ちゃんと順番を待てるようになったのです。
算数の力だけでなく、こうした「みんなと同じルールで過ごす力」まで育ててもらえたことに、感謝しています。
「算数が得意」という自信と、間違いへの怖さ
その一方で、新しい課題も見えてきました。息子は、間違うことをとても嫌がるのです。
隣でプリントを解きながら、息子はたびたび私に答えを聞いてきます。



間違ってもいいから、自分で解いて
先生のところへ持っていっておいでよ
と促しても、なかなか勇気が出ない様子でした。
でも、これも少しずつ変わってきています。間違うことにも、だんだん慣れてきているのです。
「できた!」という成功体験と、「間違っても大丈夫」という安心感。その両方を、ゆっくり積み重ねている最中です。
学習に、ときどき「タイル」を混ぜる


公文のプリント学習はとても良いものですが、我が家ではときどき、トモニで教わったタイルの学習に戻ることも大切にしています。
プリントだけだと、計算が「手順の暗記」になってしまうことがあります。タイルを使うと、数の意味やまとまりを、目で見て手で触れて確かめられる。「わかって解く」感覚を、ときどき思い出させるためです。
学習を進めながらも、土台の理解を忘れない。これも、参考にしているトモニの教えのひとつです。
発達障害の子は、公文に通える?我が家の正直な答え
ここまで読んで、「うちの子も公文に通えるかも」と思ってくださったかもしれません。でも、正直にお伝えしておきたいことがあります。
息子が今、公文に通えているのには、いくつかの幸運が重なっています。
ひとつは、私が隣で伴走できていること。もし伴走なしで「一人で通ってね」という形だったら、息子は続けられなかったと思います。
もうひとつは、先生の理解があったこと。これは本当にありがたいことですが、たまたま良い先生に巡り合えただけ、という面もあります。教室によっては、受け入れてもらえなかった可能性もあるでしょう。
そして、息子は自閉症で多動の傾向はありますが、学校で突然教室を飛び出すようなことはなく、どちらかというとおとなしい部類です。
だから、「発達障害の子なら、誰でも公文に通えますよ」とは、軽々しくは言えません。子どもによって、状況は本当にさまざまだからです。
それでも、伝えたいこと
それでも、私が伝えたいことがあります。
もし今、「うちの子には無理かもしれない」と迷っているなら、まずは教室に相談してみてほしいのです。
我が家のように、親が隣に座ることから始められるかもしれません。空いている時間を選んだり、少し工夫したりするだけで、ひらける道があるかもしれない。
子どもに合う方法は、ひとつではないのだと思います。
我が家も、まだ途中です。最近では、先生から「そろそろ一人で座れるんじゃないですか?」と言っていただけるようになりました。少しずつ、私も距離を置いていこうと思っています。
一歩ずつ、息子のペースで。これからも、隣で見守りながら歩いていきます。









