「自閉症の弟がいることで、長男と次男に我慢をさせているのではないか」
私はこれまで、心のどこかで気になっていました。
わが家には、ASD(自閉スペクトラム症)の三男と、年の離れた長男・次男がいます。三男が生まれたとき、長男は10歳、次男は7歳でした。
三男が自閉症と診断されたのは、年長の3月です。それまでは家族の誰も三男が自閉症だとは思っておらず、長男と次男も特別な意識を持たず、いつもの弟として接していました。
今回、初めて二人に「三男のことで困ったことや、我慢したことはある?」と聞いてみました。
二人の答えは、どちらも「特にない」でした。
長男は「ぜんぜん普通やと思ってた」と言い、次男に「お母さんは三男に甘いと思う?」と聞くと、意外にも「どちらかというと、三男に対して一番厳しいと思う」と返ってきました。
もちろん、これはわが家の長男と次男が、今の時点で話してくれた本音です。家庭の状況や子どもの性格によって、きょうだい児の感じ方はそれぞれ違うと思います。
この記事では、自閉症の弟を持つ長男・次男に実際に聞いたことと、診断の前後で変わらなかった兄弟の日常についてお話しします。
「ほかのきょうだいに我慢させているのでは」と心配している方に、わが家の一例として読んでいただけたらうれしいです。
年の離れた兄たちにとって、三男はかわいい弟だった

三男が生まれたころ、長男と次男は二人ともすでに小学生でした。二人が赤ちゃん返りをすることはありませんでした。
それどころか、二人とも三男のお世話を手伝ってくれました。三男がまだ赤ちゃんだったころは、長男が三男と一緒にお風呂へ入り、私が外で受け取ってバスタオルで拭く、という役割分担をしていました。
夫が仕事で忙しかったため、長男と次男が手伝ってくれることを本当にありがたく感じていました。
三男が5歳のころ、長男は中学3年生で受験生でした。それでも勉強の休憩時間には、三男のトランプ遊びに付き合ってくれました。ババ抜きやダウト、UNOを家族でよく楽しみました。
現在、長男は高校3年生で、大学受験を控えています。自宅で顔を合わせる時間は以前より短くなりました。
それでも、学校へ行くまでの少しの時間や土日の夜に三男の姿を見ると、声をかけてくれます。
長男は三男にこんなふうに声をかけることがあります。
長男かわいいなあ
ずっとこのままがいいなあ
また、ピアノが得意なので、三男が音楽クラブで練習している曲を伴奏してくれることもありました。
次男と三男の関係は、長男との関係とは少し違います。次男は三男の頭を叩いたり、足で蹴ったりすることがあります。
言葉だけを見ると激しく感じますが、本気で痛めつけているわけではありません。学校や塾から帰ると、三男のところへ行き、「うんこ」と言ってからかいます。
三男も笑いながら言い返しており、二人のお決まりのやり取りになっています。
三男が一番懐き、頼りにしているのは次男です。次男は魚をさばいたり、包丁を使ったりすることが得意で、三男が日曜日にチキンカレーを作るときも、よく手伝ってくれています。


自閉症と診断されても、兄弟の関係は変わらなかった
三男が自閉スペクトラム症と診断されたとき、私は大きなショックを受けました。
しかし、長男と次男に伝えると、二人は「へえ、そうやったんや〜」という反応でした。
驚いたり、ショックを受けたりしている様子はありませんでした。私が意を決して話したわりに、二人の反応はあまりにも普段どおりで、少し拍子抜けしたことを覚えています。
診断名がついたからといって、二人の三男への接し方が変わることもありませんでした。長男と次男にとって三男は、診断前から一緒に暮らしてきた、いつもの弟だったのだと思います。
兄たちが、友達の前で三男を避けるような様子も見たことがありません。
先日、三男を連れて長男の文化祭へ行きました。長男の友達は三男を見て「かわいい」と言ってくれたそうです。以前、次男の授業参観へ三男を連れて行ったときも、次男が嫌がる様子はありませんでした。
本人たちに細かな気持ちまで聞いたわけではありません。それでも私の目には、二人が三男の存在を隠したり、友達に会わせることを避けたりしているようには見えませんでした。
長男・次男に「我慢したことはある?」と聞いてみた


今回、長男と次男にそれぞれ、「三男のことで我慢したことや、困ったことはある?」と聞いてみました。
二人とも少し考えてから、「特にないなあ」と答えました。
私はこれまで、改めて二人の気持ちを聞いたことがありませんでした。もし三男がいることで、二人に我慢をさせていたのなら申し訳ないという気持ちがあったため、その答えを聞いてほっとしました。
長男に、三男が自閉症だと分かる前のことも聞きました。
長男から返ってきたのは、こんな言葉でした。



ぜんぜん普通やと思ってた
私自身も、診断を受けるまでは三男が自閉症だとは思っていませんでした。兄たちも同じように、三男を特別な存在として見るのではなく、年の離れた弟として受け止めていたのだと思います。
次男には、「三男のことをどう思う?」とも聞いてみましたが、この質問には答えませんでした。照れくさかったのか、言葉にしにくかったのか、本当の理由は分かりません。
それでも、学校や塾から帰ると真っ先に三男のところへ行き、日曜日のカレー作りを手伝っています。
「三男に対して一番厳しい」次男から返ってきた意外な答え
次男には、もう一つ聞いてみました。
「お母さんって、三男に甘いと思ったことある?」
末っ子であることに加え、自閉症の診断を受けている三男に対して、私は甘くなっているのではないかと思っていたからです。
ところが、次男から返ってきたのは予想と反対の答えでした。



どちらかというと、三男に対して一番厳しいと思う
私は少し驚きましたが、言われてみると納得するところがありました。
三男が将来、自分でできることを少しでも増やせるように、私は料理や洗濯などの家事を教えています。日曜日のチキンカレー作りも、その一つです。できないことをそのままにせず、繰り返し練習させることもあります。
振り返ると、長男と次男には、ここまで意識して家事を教えてきませんでした。今では、三男の方ができる家事もあるかもしれません。
私は三男を甘やかしているつもりはありませんでしたが、次男の目には、むしろ三男に一番厳しく接しているように映っていました。
親である私の認識と、子どもから見た家庭の姿は違うのだと気づかされました。
わが家で「きょうだい児の悩み」が少なかった理由
長男と次男が「我慢したことは特にない」と答えた背景には、いくつかの理由があると思います。
① 年齢が離れていたこと
長男とは10歳、次男とは7歳離れていたため、同じ遊びや同じ予定をいつも一緒にする関係ではありませんでした。
② 兄たちにそれぞれの生活があったこと
三男が生まれたころ、長男と次男は地域のソフトボールチームに入り、練習や試合で忙しく過ごしていました。
三男の都合で兄たちの予定を変える場面が、比較的少なかったのだと思います。
③ 三男の特性によって家族での外出が難しくなる場面が比較的少なかったこと
散髪のときに激しく抵抗したり、ときどきかんしゃくを起こしたりすることはありました。
しかし、年に一度の家族旅行では、ぐずったり、かんしゃくを起こすようなことはありませんでした。
これらの条件が重なったことで、少なくともこれまでのわが家では、長男と次男が三男のために何かを大きく我慢する場面が少なかったのだと思います。
これは、どの家庭にも当てはまる話ではありません。障害の特性や年齢差、家族の状況によって、きょうだい児が抱える気持ちは違います。
長男と次男の答えも、成長や環境の変化によって今後変わる可能性があります。
まとめ|親が想像していた気持ちと二人の本音は違っていた
私は、三男が自閉症であることで、長男と次男に我慢をさせているのではないかと心配していました。
しかし、今回初めて二人に尋ねてみると、返ってきたのは「特にない」という答えでした。
長男は三男を「ぜんぜん普通」と思っており、次男からは「三男に対して一番厳しいと思う」という意外な言葉も返ってきました。
私は二人の日常を見て、気持ちを分かったつもりになっていたのかもしれません。実際に本人へ聞いてみなければ分からないことがありました。
もちろん、今回の答えが二人の気持ちのすべてではありません。
言葉にしなかった思いや、本人たちもまだ気づいていない気持ちがあるかもしれません。これから成長していく中で、感じ方が変わることもあると思います。
だからこそ、これからも「大丈夫だろう」と決めつけず、ときどき二人の気持ちを聞いていきたいです。
三男は、長男と次男にとって「自閉症の弟」である前に、昔から一緒に暮らしてきた、いつもの弟でした。診断名がついても変わらなかった兄弟の日常を、これからも大切に見守っていきたいと思います。







